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脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準
 【昭和62年10月26日 基発第620号】
○脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について

 中枢神経及び循環器系疾患(脳卒中、急性心臓死等)の業務上外認定基準については、昭和36年2月13日付け基発第116号通達により示してきたところであるが、その後の医学的知見等について「脳血管疾患及び虚血性心疾患等に関する専門家会議」において検討が行われた。今般、その結論が得られたことに伴い、これに基づき認定基準を下記のとおり改めたので、今後の取扱いに遺漏のないよう万全を期されたい。
 また、具体的な認定に当たっての参考として「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定マニュアル」を別添のとおり作成したので、これを活用し、適正迅速な調査、認定を図られるよう配慮されたい。
 なお、本通達の施行に伴い、昭和36年2月13日付け基発第116号通達は、これを廃止する。 



1 業務上の負傷に起因する脳血管疾患及び虚血性心疾患等
 業務上負傷の後に発症したと認められる脳血管疾患及び虚血性心疾患等であって、次の(1)から(3)のすべての要件を満たすものは、労働基準法施行規則別表第1の2第1号に該当する疾病として取り扱うこと。
(1) 負傷による損傷又は症状と発症した疾病との間に、部位的又は機能的な関連が、医学上認められること。
(2) 負傷の性質及び程度が疾病の発症原因となり得ることが、医学上認められること。
(3) 負傷から症状の出現までの時間的経過が、医学上妥当なものであること。

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(解説)

1 脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定について
 脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定については、一般的に、業務上の負傷が原因となって発症したこと又は業務上の諸種の要因によって発症したことが、それぞれ医学上認められることが必要である。
 この認定基準においては、現在の医学的知見に照らし、業務上の負傷が原因となって発症又は業務上の諸種の要因によって発症したか否かの判断基準として、妥当と認められるものを認定要件とした。

2 取り扱う疾病について
 この認定基準は、中枢神経及び循環器系疾患のうち次に掲げる疾患について定めたものである。
(1) 脳血管疾患
イ 脳出血
ロ くも膜下出血
ハ 硬膜上出血
二 硬膜下出血
ホ 脳梗塞
へ 高血圧性脳症
 「脳血管疾患」とは、広義には脳血管の疾患すべてを意味するが、この認定基準では、そのうち脳血管発作により何らかの脳障害を起こしたものをいう。従来、脳卒中と呼ばれていた疾患がこれに該当する。
(2) 虚血性心疾患等
イ 一次性心停止
ロ 狭心症
ハ 心筋梗塞症
二 解離性大動脈瘤
ホ 二次性循環不全
 「虚血性心疾患」とは、冠循環不全により、心機能異常又は心筋の変性壊死を生じる疾患をいい、イからハに掲げる疾患である。また、虚血性心疾患以外の解離性大動脈瘤及び二次性循環不全を含め「虚血性心疾患等」とした。

3 業務上の負傷に起因する脳血管疾患及び虚血性心疾患等について
 解説2で掲げた疾患のうち本文記の1により判断する脳血管疾患及び虚血性心疾患等は、次の疾患である。
 なお、脳血管疾患については、次の(1)から(3)により判断することとするが、二次性循環不全については、強度の機械的外力等により急激に循環不全が引き起こされる病態であることから、負傷直後に発症したか否かを確認し判断して差し支えない。
  イ 脳血管疾患
  (イ) 脳出血
(ロ) くも膜下出血
(ハ) 硬膜上出血
(ニ) 硬膜下出血
(ホ) 脳梗塞
ロ 虚血性心疾患等
  (イ) 二次性循環不全
(1) 本文記の1の(1)について
 「負傷による損傷又は症状」の損傷には切創、挫創等の開放性損傷のほかに、打撲による内部損傷等の非関放性損傷を含む。また、症状とは、損傷が確認されない場合であっても、激しい頭痛、急激な血庄上昇等の症状が認められることをいう。
 「部位的又は機能的な関連」の部位的な関連とは、負傷部位が頭部、頸部、顔面である場合をいい、機能的な関連とは、神経系や血管系等の身体機能を介して発症する場合をいう。
(2) 本文記の1の(2)について
 負傷に起因する脳血管疾患は、多くの場合、頭部等への急激な外力の作用、つまり強度の打撲による負傷が発症要因となるが、神経系や血管系等の身体機能を介して発症する場合には、必ずしも打撲によらないことがある。例えば、頸部の刺創等により動脈閉塞を起こし、その結果、脳梗塞を発症する場合がある。
(3) 本文記の1の(3)について
 「症状の出現」とは、自他覚症状が明らかに認められることをいい、通常、負傷後24時間以内に症状が出現する。
 しかしながら、脳出血は症状の出現までに数日を経過する場合がある。また、慢性硬膜下出血や外傷性頸部動脈閉塞による脳梗塞は、数週から数一カ月に及ぶものまであり、負傷との関連については、より慎重な判断が必要である。

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5 認定に当たってのその他の留意事項
(1) 脳卒中について
 脳卒中については、解説2の(1)に述べたように、脳血管疾患の総称として用いられているので、可能な限り詳細な疾患名を臨床所見、解剖所見等により確認すること。
(2) 急性心不全について
 急性心不全(急性心臓死、心臓麻庫等)は、疾患名ではないので、その原因となった疾患名を臨床所見、解剖所見等により確認すること。なお、急性心不全は、脳血管疾患及び虚血性心疾患等に限らず他の疾病による場合もあるので留意すること。
(3) 本省りん伺について
 次の事案については、本省にりん伺すること。
イ 原因となった疾患名が明らかにならない急性心不全
ロ この認定基準により判断し難い事案

〔編注:別添「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定マニュアル」略〕

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