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振動障害の認定基準の運用上の留意点等について
 【昭和52年5月28日 事務連絡第23号】
○振動障害の認定基準の運用上の留意点等について

 振動障害の認定基準については、さきに昭和52年5月28日付け基発第307号「振動障害の認定基準について」(以下「新通達」という。)により通達されたところであるが、新通達においては、従来のチェンソー(ブッシュクリーナーを含む。)を取り扱う業務により認定基準(昭和50年9月22日付け基発第501号「振動障害の業務上外の認定基準について」。以下「旧通達」という。)が改められるとともに、その他の振動工具による振動障害の認定要件が新たに追加され、振動障害の全般について一体化して取り扱えるよう設定されたものである。
 今後、振動障害の認定に当たっては下記1に掲げる通達の改正の要点及び下記2に掲げる事項に留意のうえ、認定事務の適正迅速化が図られるようご配慮を願いたい。
 なお、「振動障害に係る業務起因性判断のための調査実施要領」を別添(略)のとおり作成したので振動障害の業務起因性判断のための調査を行う場合の参考とされたい。また、昭和50年10月8日付け事務連絡第45号「振動障害の業務上外の認定基準の運用上の留意点について」は廃止し、昭和51年11月11日付け事務連絡第45号「振動障害の認定基準等の運用上の留意点について」の振動障害の認定に関する部分(記の1)は削除する。
 



1. 通達改正の要点
(1) 認定基準の適用範囲
 旧通達においては、チェンソー(ブッシュクリーナーを含む。)を取り扱う業務による振動障害のみを対象としていたが、その他の振動工具を取り扱う業務による振動障害を含めて認定基準が示されたこと。


(2) 認定の要件等
 振動業務の従事期間が「おおむね1年又はこれを超える期間」とされたこと。また、この期間に満たない事案についての認定の考え方が示されたこと。
 振動業務に相当期間従事した後レイノー現象が発現したことが認められたものについては、末梢循環障害、末梢神経障害及び運動機能障害に係る検査を要せず、振動障害として取り扱うこととされたこと。
 特殊健康診断によって業務起因性の判断を行うことができる場合には新たに別添1に掲げる検査を行うことなく当該健康診断結果を用いて認定し得ることが示されたこと。

(3) 類似疾病との鑑別
 旧通達においては、労災保険給付の請求受理後に類似疾病との鑑別を行うことを必須条件にしているとも受けとれる表現となっていたが、一般に医師が病気の診断を行うに当たっては、適切な治療を施すため原因疾患をは握する過程で鑑別が行われるものであるところから、新通達においては、振動障害と類似の症状を呈することのある疾病が例示的に掲げられたものである。
 振動障害に係る労災保険給付の請求のあった者に類似の疾病が認められた場合の留意事項が示されたこと。
 
2. 認定基準運用上の留意点
(1) 振動業務の範囲について(本文記の1及び解説2関連)
 本認定基準の適用の対象となる振動業務の範囲が明らかにされており、取り扱う振動工具が例示されているが、これら以外の振動工具として解説2の(19)に該当するものには、例えば、次に掲げるものなどがある(商品名で示したものが含まれている。)。
 ストーバー、シンカー、ジェットタガネ、オートケレン、スーパーチゼル、ペ一ピングブレーカー、フラックスチッパ、エアーチッパ、アングルグラインダー、コンクリートバイブレーター、インパクトレンチ(ナットランナ)、バイブレーションシヤー(ハンドシャー又はニブラー)、バイブレーションドリル、電動ハンマー、オービタルサンダー


(2) 振動業務への従事歴について(本文記の1及び解説3関連)
 振動業務におおむね1年又はこれを超える期間従事していたことが認定要件の一つとされているが、この従事期間の取扱いについては、原則として次によられたい。なお、詳細な事項については握が困難な場合には、は握した資料に基づき推定により判断して差し支えない。

 ほぼ毎日のように振動業務に従事し、振動業務に従事しない期間があってもその期間が連続して1ヵ月に満たない場合は、常時振動業務に従事したものとする(1日における振動業務従事時間数の長短は原則として問わない。以下同じ。)。
(例1) 毎日のように振動業務に従事した例
 (従事期間 約1年1ヵ月)
(例2) 間けつ的に振動業務に従事した例
 (従事期間 約1年2ヵ月)
 
 振動業務に従事しない期間が途中1ヵ月以上に及ぶことがある場合はその期間を除いた合計期間を振動業務に従事した期間とする。
(例1) 一部の期間を除いて毎日のように振動業務に従事した例
 (従事期間 約1年1ヵ月)
(例2) 間けつ的に振動業務に従事し、1ヵ月以上にわたって振動業務に従事しない期間のある例
 (従事期間 約1年)

(3) 症状又は障害について(本文記の2及び解説4関連)
 本文記の2の(1)に掲げる自覚症状(解説4の(1)に掲げる症状を含む。以下同じ。)及び障害と同2の(2)に掲げるレイノー現象は各々独立した要件として並記されたものであるので、同2の(1)の要件を満たす場合においてレイノー現象が認められないもの及び同2の(2)の要件を満たす場合において自覚症状及びレイノー現象以外の障害が認められないものはいずれも同2の認定要件を満たすこととなる。

 別添1の検査項目に係る検査を行う場合は、検査条件と評価の斉一性を保つため、原則として別添1に掲げる検査項目及び手技によって行われるよう引き続き周知を図る必要がある。
 解説4の(2)のなお書で「個々の事案に応じて医師が有効であると判断する方法により前記障害の検査を行っているときは、その結果を参考とすること。」とされているのは、別添1に掲げる項目以外の検査を行った場合の取扱いが示されたものである。

 振動業務に相当期間従事した後にレイノー現象が発現したことが客観的に認められた者については、振動障害の認定要件を満たすものとして取り扱うこととされているので、次の場合を除き解説6の類似疾病との鑑別及び別添1の諸検査を行うまでもなく振動障害として取り扱って差し支えない。
(イ)  過去にレイノー現象が発症したことのある事実は確認されたが時間的経過から見て現に振動障害が認められるものであるかどうか明らかでない場合
(ロ)  当該労働者の既往歴又は振動作業従事前の作業歴等からみて振動業務以外の原因によるレイノー現象の発症が強く疑われる場合

 レイノー現象の確認は、医師の診断によることとなるが、解説4の(3)のハの「客観的な資料」とは、過去の診療録、本人のものと認められる写真、信用できる他人の証言等をいい、これらのいずれかの資料によって医師が認めたものであれば足りる。

 レイノー現象が確認され、認定要件を満たす事案であっても、適切な療養を図るためには、類似疾病の併存の有無及び振動障害の程度のは握の必要があるので検査項目の省略は、医師の判断によられたい。

 振動障害が発生したにもかかわらず適切な治療を受けていない等の場合には、振動業務を離れて後数年経過しても症状が遷延することがある。

(4) 健康診断項目の取扱いについて(解説5関連)
 昭和50年10月20日付け基発第609号通達及び同日付け基発610号通達又は同日付け基発第608号通達による特殊健康診断の結果、健康管理の区分が「管理C」とされた者については、その決定の根拠となった症状等を確認のうえ、本文2の(1)に該当するものとして取り扱うこととされたので、次の場合を除き、振動業務従事歴、振動ばく露の程度等の調査、解説6の類似症状との鑑別及び別添1の諸検査を改めて行う必要はない。ただし、療養の方法、手段を確立するために行う検査・診断はこの限りでない。
 振動業務従事歴が本文記の1に満たない場合
 取扱い工具等の種類が解説2に該当しないと認められる場合
 特珠健康診断後の時間的経過から見て、現に振動障害が存在しているかどうか明らかでない場合
 当該労働者の既往歴又は振動業務従事以前の業務歴等からみて、振動業務以外の原因による疾病が強く疑われる場合

(5) 類似疾病の取扱いについて(解説6関連)
 振動障害と類似の症状を呈することのある疾病として10種類の類似疾病が揚げられているが、これは認定の条件として示されたものではなく、医師が当該患者について適正な診断、治療を行うための情報提供という意味で掲げられたものであるから、認定要件の整っている事案について認定の資料を得る目的で改めて鑑別診断を求めることはさけられたい(前記1の(3)参照)。
 振動障害の認定要件を満たす者に類似疾病が併存している場合の治療の範囲は、振動障害に係る治療のみに限られることとなるが、その治療の必要上類似疾病に係る治療も併せて行わなければ治療効果が期待できないと認められる場合は、類似疾病に係る治療も振動障害の治療の範囲に含めて差し支えない。

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