HOME情報公開推進局  認定基準
適正給付管理の実施について
 【昭和59年8月3日 基発第391号】
○適正給付管理の実施について

 最近の厳しい社会経済情勢を反映して労災保険制度についても、その公正な運営が強く求められているところであるが、労災保険制度に対する理解の不足、傷病自体の有する病像の不明確性等の要因もあって、労災保険により療養を受けている者の中には、必要以上の期間にわたり療養を継続しているなど、公正を欠くとみられるものが、少なくない現状にある。
 こうした現状にかんがみ、長期にわたって療養を継続している者の実態を把握し、個々の症状に応じた適正な給付を行うための管理方法等を下記のとおり定めたので、各都道府県労働基準局(以下「地方局」という。)においては、これを参考として適正給付管理のための体制の確立に努められたい。
 なお、本通達の趣旨に反しない限り、地方局ですでに実施している管理方法等があればこれを変更する必要はない。また、別紙適管様式第1号「適正給付管理カード(個人別)」(以下「管理カード」という。)については、未だ個人別管理を実施していない地方局の便宜を図るためのものであり、既に同種カードを作成して個人別管理を実施している地方局にあってはこれを参考資料とし、さらに管理力ード記載の各種記録欄についても、地方局で適正給付を実施するうえで必要と認められる欄を使用すれば足りるものであるので念のため申し添える。
 



1. 適正給付管理対象者
 業務災害又は通動災害の被災者であって、原則として療養を1年以上にわたって継続している者を適正給付管理対象者(以下「管理対象者」という。)とする。

2. 管理方法
(1)  長期療養者台帳の作成等
イ.  本省では、療養を開始して6か月を経過した傷病労働者について長期療養者台帳を作成し、当該傷病労働者の保険給付記録等の管理を行う。
ロ.  本省では、台帳管理を開始した傷病労働者(以下「台帳登記者」という。)について適正給付管理名簿(新規登記者分)(別紙2適管様式第2号)を作成し、これを当該傷病労働者が属する事業場の所在地を管轄する都道府県労働基準局(以下「所轄局」という。)の端末装置に台帳管理を開始した日の属する月に配信する。
ハ.  本省では、台帳登記者の給付歴等について、診療費給付基本台帳、休業給付基本台帳等により毎月1回更新する。
 また、台帳登記者のうち、療養を開始して1年を経過した者(以下「1年経過者」という。)については、適正給付管理名簿(1年経過者分)を作成し、所轄局の端末装置に配信する。
ニ.  台帳登記者のうち、療養中止等により3ヵ月間給付歴の更新のなかった者についても、ハと同様、適正給付管理名簿(療養中止分)に配信する。

(2)  適正給付管理カードの要求
イ.  所轄局又は傷病労働者の属する事業場の所在地を管轄する労働基準監督署(以下「所轄署」という。)は、個々の台帳登記者にかかる適正給付管理力一ド(別紙1適管様式第1号)を必要とする場合には、随時、本省に対して配信要求を行うことができる。
ロ.  所轄署は、新規の台帳登記者又は1年経過者の全負にかかる適正給付管理カードを一括して配信要求することができる。
ハ.  適正給付管理カードの配信要求は、適正給付管理名簿等要求帳票(帳票様式)により行うこととし、本省では、上記イ又はロの配信要求があった場合には、所轄局又は所轄署の端末装置に当該傷病労働者にかかる適正給付管理力一ドを配信する。

上に戻る

(3)  調査事項等の台帳登記
イ.  所轄局又は所轄署は、本省から配信された上記(1)、(2)の適正給付管理名簿、適正給付管理カードを活用し、新たに管理対象となった者について適正給付管理に努めるものとする。
ロ.  所轄局又は所轄署は、管理対象者について(5)に示す調査を実施した場合には、調査事項等の記録整備を行うことになるが、調査事項等のうち、次の事項については、適正給付管理台帳登録(変更)帳票(帳票様式)により、本省が管理する(1)のイの長期療養者台帳に登記することができる。
(イ) 労働者の氏名・住所  (ロ) 統計項目  (ハ) 調査年月日  (ニ) 調査書番号
(ホ) 調査の相手  (ヘ) 治ゆ見込年月日
(ト) 就労見込年月日  (チ) 治ゆ年月日  (リ) 死亡年月日
(ヌ) 傷病年金支給決定年月日  (ル) 傷病等級

(4)  給付状況等の検索及び各種名簿の要求
イ.  所轄局ヌは所轄署は、台帳登記者に係る保険給付状況、調査の実施状況等について適正給付管理名簿等要求帳票により、随時、検索を行うことができる。
 なお、この場合の本省からの出力帳票は、適正給付管理カードとする。
ロ.  所轄局又は所轄署は、適正給付管理を実施する上で下記の名簿を必要とする場合は、適正給付管理名簿等要求帳票により、随時、本省に対して配信要求を行うことができる。
  事業場別適正給付管理名簿
  医療機関別適正給付管理名簿
  傷病別適正給付管理名簿
  治ゆ見込者適正給付管理名簿
  (適管様式第2号)

(5)  調査の実施
イ.
(イ)  所轄署は、管理対象者となった者のうちから前記(2)の管理カ一ド等及び関係資料により調査を必要とすると認められる者(以下「調査対象者」という。)を選定し、当該調査対象者の療養の要否、休業の要否等について、できるだけ早期に調査を実施するものとする。
(ロ)  適正給付管理を実施するうえで、主治医の意見は重要な参考となるものであるので調査対象者については、まず主治医の意見を徴することが肝要である。
このため、所轄署が調査を行うに当たっては、まず調査対象者の受療している医療機関に対して調査を行うこととなるが、必要に応じて当該調査対象者本人の調査も併せて行うものとする。
(ハ)  所轄署は、調査対象者について、当該調査を必要とする事項に応じてできるだけ早期に調査を行うものとする。
(ニ)  所轄署は、調査を行う場合において必要と認められるときは、所轄局に対し、当該調査対象者に係る診療費請求内訳書(以下「レセプト」という。)の送付依頼を行うものとする。
 また、所轄局以外の局(以下「他局」という。)管内の医療機関で受療している管理対象者に係るレセプトについては、所轄局を経由して、当該他局に対し、その写の送付依頼を行うものとする。
 この場合、送付依頼をするレセプト写は調査に必要な最小限のものに限るように努めること。
 他局は、所轄局から送付依頼があったレセプトについては速やかにその写を作成して送付すること。
ロ.  所轄署は、上記イの調査の結果、療養(補償)給付又は休業(補償)給付の支給要件の判断に疑義のあるものについては、地方労災医員、同協議会等に医学的意見を求めたうえで所轄局と協議を行いその後の処理方針を決するものとする。
ハ.  所轄署は、上記イの調査又はロの協議の結果さらに医療機関、調査対象者等に対して調査及び指導を行う必要が認められた場合には、所要の調査及び指導を行うものとする。
ニ.  所轄署は、調査対象者から保険給付請求書の提出があった場合には、上記イ、ロ及びハの調査等の結果を十分考慮のうえ所要の措置を行うものとする。

上に戻る

3 その他
(1)  所轄局は、適宜所轄署と処理方針、処理方法等について協議する場を設けるとともに、必要に応じて個別事案について所轄署を指導し、適正給付管理に努めること。
(2)  適正給付管理に関する調査結果等については、所轄署長が行政処分を行った後、将来において審査請求若しくは再審査請求又は行政訴訟の提起があることも想定されるので、適正な記録の保存に努めること。
(3)  所轄局は毎年4月末日までに前年度の適正給付管理状況を本省(補償課)あて所定の報告様式(別紙適管様式第3号)により報告すること。
 
(編注:一部改正 昭和61年7月10日付け基発第412号)
(別紙1〜4(略))

上に戻る