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林業労働者の振動障害の補償対策
 【昭和50年11月8日 基発第659号】
○林業労働者の振動障害の補償対策について

 最近,林業においてチェンソーによる振動障害が多発している実状にかんがみ,林業における振動障害に係る総合的対策の検討を行っているところであるが,当面の補償事務については,下記の点に留意のうえ,事務処理に遺漏なきよう取り計らわれたい。
 



1.振動障害に係る診断及び治療体制について
(1)  振動障害に係る診断体制
 振動障害の業務上外の認定基準については,昭和50年9月22日付基発第501号により通達したところであるが,これが適正な運用を期するために,医療機関等に対する認定基準の周知徹底を図るとともに,振動障害の診断について専門的知識を有する医師及び上記認定基準に示した諸検査が可能な機器等を保有する医療機関をは握し,被検者の受入れ,早期診断等について協力を得るよう措置を講ずること。
 なお,労災病院については,担当医師の研修及び検査機器の整備を早急(検査機器については本年11月末までに整備の予定)に行うこととしている。


(2)  振動障害に係る治療体制
 振動障害の治療方法については,現在最新の医学的な意見を求めるため,本省に「振動障害の治療等の検討に関する専門家会議」を設け,鋭意検討を願っているところであり,同会議での結論が得られ次第通達することとするが,当該疾病の治療方法は,現在のところ整形外科を中心とする理学療法,薬物療法,リハ療法が主であると考えられるので,これらの療法の可能な医療機関をは握し,地域ごとの患者発生見込み数に応じた受入れ体制の確立をはかるとともに,関係労使に対し必要な周知を図ること。

2.振動障害に係る補償事務の取扱いについて
(1)  保険給付請求書の証明等を行うべき事業主
 振動障害にかかった労働者が過去に2以上の事業場(事業主を異にする場合に限る)において振動障害の発生のおそれのある作業に従事している場合の保険給付請求書における事業主の証明及び待期期間3日について労働基準法の規定による休業補償を行うべき事業主の決定については,振動障害の発症が医師の診断により確定した日における労働者の就業状況に応じ,次に掲げる事業主とすること。
 疾病の発生が医師の診断により確定した日に,当該労働者が当該疾病の発生のおそれのある作業に従事していた場合には,当該疾病の発生が確定した日に当該労働者が就労していた事業場の事業主
 疾病の発生が医師の診断により確定した日に,当該労働者が就労していない場合,及び当該疾病の発生のおそれのない作業に従事している場合には,当該疾病の発生のおそれのある作業に最後に従事した事業場の事業主
 また,上記により保険給付請求書に事業主の証明を行うべきものとされた事業主が証明を拒否する場合には,事業主証明の趣旨を説明し説得に努めることとされたい。しかし,当該事業主に証明を行わせることが困難であると思料される事項については,証明を省略させることとして差し支えないが,この場合には実態調査等で事実確認を行うものとする。
(注:待機期間3日の休業補償については昭和57年5月19日付け基発第342号通達参照)

(2)  治ゆ,再発等の取扱い
 振動障害の症状の程度の評価,治ゆの時期の判断等は,専門医の意見をきいて行わなければならないのはもとよりであるが,当該疾病の性質上,寒冷期に発症し,温暖期に症状が消退し,また,振動工具を使用する作業(以下「振動作業」という。)に復帰すれば,再び発症するという特異な形態が見られることから,治ゆ,再発等を判断するに当たっては,現症状に関する医証のみならず,就労の可否,職種,労働時間の制限の要否等についての医学的意見を求め,これらを総合的に勘案して行うこととするが,特に次の点に留意して取り扱うこと。
 振動作業はもとより,他の作業に就くことについても労働時間を制限する必要が認められる者については,その必要の認められる期間は原則として療養を継続する必要があるものとして取り扱うこと。
 振動作業に就くことの制限を受けているものであっても,他の作業に就くことについて労働時間を制限する必要が認められない者については,現に療養を行っていない場合は,原則として治ゆしたものとして取り扱うこと。
 治ゆ後,振動作業以外の業務に従事したのち発症し,療養の必要が生じた者については,再発として取り扱うこと。
 治ゆ後,振動作業に従事したのち発症し,療養の必要が生じた者については,新規として取り扱うこと。

(3)  休業補償給付の取扱い。(廃止)

(4)  平均賃金の算定
 労働者が業務上の振動障害であると診断された日に,すでに振動障害の発生のおそれのある作業に従事していた事業場を離職している場合の平均賃金の算定については,昭和50年9月23日付け基発第556号によるものであること。

3.メリット料率算定当たっての保険給付の取扱いについて
 林業における振動障害に係る保険給付額については,当該労働者が上記2の(1)の事業場において,雇用された期間が2年未満である場合に限り,当該事業場のメリット料率算定の際の収支率の算定基礎から除外すること。
(注: 現行の振動障害の取扱いについては,上記の「2年未満」が1年未満に改められている。労働保険の保険料の徴収等に関する法律第12条第3項及び同法施行規則第17条の2並びに昭和55年12月5日付け発労徴第68号,基発第674号通達参照)

4.林業におけるいわゆる一人親方の労災保険ヘの特別加入について
 国会等において,振動障害対策の一環として,林業におけるいわゆる一人親方を労災保険に特別加入させることについて要望,質疑等がみられたことにかんがみ,先般,林業局等22局を選定し,林業のいわゆる一人親方の就労の実態,災害発生状況等について調査を実施したところであるが,現在その結果を集計,分析中であり,この結果をまって特別加入の要否について検討を行うこととしていること。

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