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脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物(芳香族化合物の二トロ又はアミノ誘導体を除く。)又は複素環式化合物のうち有機溶剤として用いられる物質による疾病の認定基準
 【基発第122号 昭和51年1月30日】
○脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物(芳香族化合物の二トロ又はアミノ誘導体を除く。)又は複素環式化合物のうち有機溶剤として用いられる物質による疾病の認定基準について
 脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物(芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体を除く。)又は複素環式化合物のうち有機溶剤として用いられる物質を取り扱う労働者に発生した疾病の業務上外の認定は今後下記によることとしたので遺憾のないようその事務処理に万全を期されたい。
 なお、この通達の基準を満たすものであって、労働基準法施行規則別表第1の2(以下本通達において「別表」という。)第4号の規定に基づく労働省告示第36号(以下本通達において「告示」という。)表中に掲げる化学物質による疾病(がんにかかるものを除く。)については、別表第4号1、告示で指定された化学物質以外の化学物質による疾病については、別表第4号8、ベンゼンによる白血病については、別表第7号8に、それぞれ該当する疾病として取り扱い、この通達の基準により判断し難い事案については関係資料を添えて本省にりん伺されたい。
 おって、この通達の解説部分は認定基準の細目を定めたものであり、本文と一体化して取り扱われたい。



 相当量のベンゼン又はその同族体、アセトン又はその他の溶剤に相当期間にわたり、くり返しさらされる業務(以下「業務」という。)に従事しているか、又は、その業務から離れた後おおむね6ヵ月未満の者であって、次の(1)の自覚症状に加えて(2)〜(7)のいずれかに該当する症状を呈し、医学上療養が必要であると認められ、かつ、ベンゼン又はその同族体、アセトン又はその他の溶剤以外の原因により発病したものでないと判断されるものであること。
 なお、症状が他の原因による症状と鑑別困難な場合には、症状が当該労働者の溶剤取扱職場への就労後に発症したか否か、作業の経過とともにあるいは環境ばく露条件の変化に伴って症状が変化したか否か、作業からの離脱により症状の改善がみられたか否か、同一職場で同一作業を行う労働者に同様の症状の発生をみたか否か等を参考にして業務起因性を判断することとする。この場合、尿中代謝物質濃度は溶剤に対するばく露の有無及びその程度を知るうえで有力な指標と考えられる。
(1) 次の自覚症状のいずれかが常時又は持続的に訴えられるものであること。
頭重、頭痛、めまい、焦燥感、不眠、もの忘れ、不安感、しびれ感、倦怠感、心悸こう進、食欲不振、悪心、嘔吐、胃痛、腹痛、皮膚又は粘膜の局所症状
(2) 次の皮膚又は粘膜の症状のいずれかが認められるものであること。
 急性又は慢性皮膚炎(乾燥性、落屑性、亀裂性など)
 爪炎、爪囲炎
 結膜炎、角膜炎
 鼻炎等の上気道の炎症
(3) 次の神経、筋、感覚器症状のいずれかが認められるものであること。
 四肢の知覚障害、運動障害又は筋萎縮
 視覚減退、視野・色視野の狭窄などの視神経障害又はその他の脳神経障害
 中枢神経障害(例えば、脳波の明らかな異常)
(4) 健忘、幻覚、意欲減退、痴呆などの精神障害が認められるものであること。
(5) 次の血液所見のいずれかが認められるものであること。
 常時貧血があること
 常時白血球減少があること
 鼻出血、歯肉出血などの粘膜又は皮膚における出血傾向があるかあるいは著しく血小板が減少していること
 なお、イ及びロにいう「常時」とは、日を改めて数日以内に2回以上測定した値に大きな差を認めないものをいう。ただし貧血に関しては、同時に数項目を測定し、それらに一定の傾向があったときは、この限りではない。
 採血は空腹時に行うものとする。
(6) 肝機能検査で明らかな異常が認められるものであること。
(7) 腎機能検査で明らかな異常が認められるものであること。
 業務により大量もしくは濃厚なベンゼン又はその同族体、アセトン又はその他の溶剤にさらされて意識障害、歩行障害等の中枢神経障害、呼吸器障害その他の急性中毒症状もしくはその続発症を起したもの。

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解説
(1) この認定基準は、ベンゼン及び有機溶剤中毒予防規則に掲げられている有機溶剤(二硫化炭素を除く。)について一括作成したものである。
(2) 有機溶剤は、数種のものが混合されて使用されることが多いが、その場合には、使用された有機溶剤の構成成分の種類と構成比を明らかにし、それぞれの有機溶剤の毒性を勘案して当該労働者の自覚症状並びに臨床検査の項目を選択し、判断する必要がある。
(3) 有機溶剤中毒予防規則に定められていない有機溶剤(3に掲げたものを除く。)による疾病、及び本文の1の(1)に掲げた自覚症状だけで(2)以下の症状が認められないものについては、本省りん伺により個別に判断することとする。
 有機溶剤中毒の場合、中枢神経系、末梢神経系、自律神経系、内分泌系の障害の徴候として自覚症状のは握は重要であり、自覚症状以外の明らかな所見を認め難い場合もある。したがって、自覚症状と業務との関連性を十分に考慮することが必要であり、専門医によって詳細には握された症状及び記の1の後段(なお書部分)に示すところにしたがって、注意深く判断しなければならない。
 次に掲げる溶剤にさらされる業務に従事しているか又はしていた者が慢性もしくは亜急性の症状を呈する場合(記の1のばく露条件を満たしている場合に限る。)のうち、次に掲げる所見(2以上の検査項目を掲げたものはその1)が認められた事例については、業務起因性があるものとして取り扱ってさしつかえない。
溶剤名 検査項目 所見
ベンゼン
 
 
 
貧血に関する検査
 
 
出血傾向に関する検査
白血球数計測
白血病に関する検査
精神医学的検査
赤血球数  男子 400万/mm3未満
 女子 350万/mm3未満
血色素量  男子 12.0g/dl未満
 女子 10.5g/dl未満
全血比重  男子 1.052 未満
 女子 1.049 未満
○皮膚粘膜の出血傾向、血小板の著減
○4000/mm3未満
○骨髄性白血病と診断される所見
○中毒性精神異常と診断される所見
キシレン
テトラクロルエチレン
トリクロルエチレン
トルエン
精神医学的検査 中毒性精神異常と診断される所見
1・1・2-トリクロルエタン
1・1・2・2-テトラクロルエタン
クロロホルム
四塩化炭素
ジメチルホルムアミド
イ 肝機能検査


ロ 腎機能検査
○肝機能障害を示す所見、
 例えば、GPT100カルメン単位以上の場合など
○腎機能障害を示す所見、
 例えば、尿蛋白、尿沈渣、PSP試験、濃縮試験などで明らかな以上を示す所見
トリクロルエチレン
トルエン
ノルマルヘキサン
メチルブチルケトン
末梢神経機能検査 ○対称性の四肢末端優位の知覚低下、運動障害、筋萎縮
○運動神経伝道速度の有意な低下
メタノール
酢酸メチル
眼科学的検査 ○視神経障害に基づく明らかな視機能低下を示す所見
 (注)白血病については記の1の6ヵ月未満の制限が妥当でない場合がある。

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