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芳香族化合物の二トロ又はアミノ誘導体による疾病の認定基準 |
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【基発第565号 昭和51年8月4日】 |
○芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体による疾病の認定基準について |
芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体を取り扱う労働者に発生した疾病の業務上外の認定は、今後下記によることとしたので、今後の認定に当たっては、この通達の基準を満たすものであって労働基準法施行規則別表第1の2(以下本通達において「別表」という。)第4号の規定に基づく労働省告示第36号(以下本通達において「告示」という。)表中に掲げる化学物質による疾病(がんを除く。)については別表第4号1、告示により指定された化学物質以外の化学物質による疾病については別表第4号8、がんについては別表第7号に掲げるがん原性物質による疾病に該当するものとしてそれぞれ取り扱い、この通達の基準により判断し難い事案については関係資料を添えて本省にりん伺されたい。
なお、この通達の解説部分は、認定基準の細目を定めたものであり、本文と一体化して取り扱われたい。
おって、「労働基準法施行規則第35条第27号に掲げる疾病のうち『ニトロベンゼン』、『クロールニトロベンゼン』及び『アニリン』に因る中毒の認定について(昭和34年8月20日付け基発第576号(昭和39年9月8日付け基発第1049号により一部改正))」は廃止する。 |
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記
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1 |
芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体にばく露する業務に現に従事し、又は従事していた労働者に発生した疾病であって、次の(1)及び(2)に掲げる要件のいずれにも該当するものであること。
(1) |
上記の業務に相当期間従事した後おおむね6ヵ月以内の間に発生した疾病であること。 |
(2) |
次の@の自覚症状に加えてAからFまでに掲げる症状のいずれかに該当する症状が認められる疾病であること。
@ |
常時又は持続的に訴えられる次に掲げる自覚症状のうちいずれかのもの
頭重 頭痛 めまい 心悸冗進 倦怠感 悪心 胸痛
尿の異常着色(茶褐色) 頻尿 排尿痛 皮膚の掻痒感 皮膚の発疹 |
A |
明らかなチアノーゼ、メトヘモグロビン血症又は赤血球にハインツ小体が認められるもの |
B |
常時存在する貧血
なお、「常時存在する」とは、日を改めて数日以内に2回以上測定した値に大きな差を認めない場合をいう。ただし、同時に貧血に関し、数項目について検査を行いその結果に一定の傾向があったときはこの限りでない。 |
C |
肝機能検査における明らかな異常 |
D |
明らかな精神神経障害 |
E |
接触皮膚炎 |
F |
非細菌性の出血性膀胱炎 |
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なお、上記(1)の要件を満たさない場合又は(2)の症状の発生に関し、芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体以外の原因による疑いがあって鑑別困難な場合には、症状が当該物質にばく露する業務に従事した後に発症したか否か、作業の経過とともに又は当該物質へのばく露程度(気中濃度、ばく露時間、皮膚接触程度等)の増大により症状が増悪したか否か、作業からの離脱により症状の改善がみられたか否か、同一職場で同一作業を行う労働者に同様の症状の発生をみたか否か等を調査のうえ業務起因性を判断すること。
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2 |
業務により一時的に大量又は濃厚な芳香族化合物の二トロ又はアミノ誘導体にばく露して急性中毒又はその続発症を起こしたものであること。
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3 |
芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体のうち「ベンジジン及びその塩」又は「ベータ‐ナフチルアミン及びその塩」にばく露する業務に従事していた者に発生した疾病で次の(1)及び(2)に掲げる要件のいずれにも該当するものであること。
(1) |
上記の業務への従事歴が3ヵ月以上の者に発生した疾病であること。 |
(2) |
尿路(腎臓、腎盂、尿管、膀胱及び尿道をいう。以下同じ。)に原発した腫瘍であること。 |
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なお、上記の業務に従事していた労働者で当該業務への従事歴が3ヵ月未満のものに係る尿路腫瘍及び上に掲げる物質以外の芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体にばく露する業務に従事しているか又は従事していた労働者に係る尿路の腫瘍については、当分の間、作業内容、従事期間、ばく露した物質の名称、ばく露の程度、症状(臨床検査、病理組織学的検査、剖検等の所見を含む。)等を調査のうえ本省にりん伺すること。 |
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解説
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1 |
芳香族化合物の二トロ又はアミノ誘導体の範囲 |
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本認定基準は、芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体(ベンゼン核に二トロ基又はアミノ基を一つ以上有する化合物をいう。以下同じ。)について一括作成したものである。
芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体のうち有害性のわかっている主なものを表1に示す。表中A)ニトロ誘導体及びB)アミノ誘導体の物質の名称欄に掲げる物質は、本文記の1の芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体による慢性中毒又は記の2の芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体による急性中毒発症の起因物質となることのあるものである。C)がん原性物質の物質の名称欄に掲げる物質については、下記6(尿路の腫瘍)を参照すること。
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2 |
吸収経路 |
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芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体は、常温では液体又は固体であるが、産業現場では通常その蒸気、粉じんのばく露を受けることが多い。中毒は経気道吸収又は経皮吸収によって発生する。また、芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体の大部分の種類は、容易に経皮吸収されることにとくに留意すべきである。
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3 |
慢性中毒 |
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本文記の1は、芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体による慢性中毒について業務起因性の判断要件を示したものである(一般に亜急性と呼ばれる中毒についても、本項によって業務起因性の判断を行ってよい場合が多い。)。
芳香族化合物の二トロ又はアミノ誘導体へのばく露程度が大である場合には早いものでは1週間程度従事した後に亜急性の中毒症状が現われることがあり、ばく露程度が余り大きくない場合には一般に数カ月以上の期間従事した後に慢性的症状が現われる。
したがって、本文1の(1)の「相当期間」とは、上記のようなばく露の程度、症状の現われ方との関連で、おおむね数週間以上ないし数カ月以上と考えるべきものである。なお、芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体により発生する慢性中毒は、ばく露から離れた後おおむね6ヵ月を超えた場合には発生しにくいといわれている。
慢性中毒としては、貧血、精神神経障害、肝障害が知られているが、メトヘモグロビンやハインツ小体は検出されないことが多い。しかしこのような場合でも、網状赤血球の増加、血清鉄の増加、シデロサイト(Siderocyte)の末梢血への出現が診断の助けとなる場合がある。
精神神経障害の症状としては、手足のふるえ、深部腱反射亢進、情緒不安定、歩行失調等を呈し、ときには発汗異常、血管運動神経の異常をみることがあり、また、視神経炎、末梢神経炎を起こす場合もある。
尿中代謝物質濃度は、当該物質に対するばく露の有無及びその程度を知るうえで有力な指標となる場合がある。
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4 |
皮膚障害 |
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芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体には、一次刺激性又は感作性接触皮膚炎の原因となるものが少なくなく、とくに強い感作性物質にばく露するとき、感受性者には激しい炎症症状をみる。また、光過敏性を示す物質のあることにも注意を要する。芳香族化合物の二トロ又はアミノ誘導体を使用して二次的反応を行う工程に従事する者に感作性接触皮膚炎の発生をみ、これが湿疹化し、治ゆの遷延することも多く、また、集族性の座瘡様皮疹をみることもあるが、芳香族化合物の二トロ又はアミノ誘導体については、多価感作や交叉感作も考慮すべきであり、また、皮疹が工程中の副生物に起因することもあるので、起因物質の判断には慎重を要する。
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5 |
急性中毒 |
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本文記の2は芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体に対する事故的ばく露等の際の芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体による急性中毒について業務起因性の判断要件を示したものである。
芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体による急性中毒では、その直接作用又はメトヘモグロビン形成を介しての症状として次のような所見が見出される。すなわち、悪心、嘔吐、頭痛、チアノーゼ等にはじまり、呼吸困難、興奮、意識混濁、痙攣、意識喪失、失禁等が現われる。メトヘモグロビンは、ヘモグロビン(血色素)の2価の鉄が3価となった一種の不活性ヘモグロビンで、メトヘモグロビンが増加すると生体は酸素欠乏状態に陥る。メトヘモグロビン量と症状との関係は、表2の如くいわれている。なお、血中メトヘモグロビンの濃度測定法を別紙1に掲げる。
メトヘモグロビンが多量にできる場合は、赤血球にハインツ小体が出現し、続いて赤血球の破壊亢進、すなわち、溶血性貧血が起こり、網状赤血球の増加、血清鉄の上昇がみられることが多い。溶血が高度の場合には、さらに、黄疸、肝腫又は脾腫を伴う場合がある。尿は茶褐色で、ウロビリノーゲン、ウロビリン、還元性物質(ことに芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体代謝物質のグルクロン酸抱合体)が異常に増加し、また、血色素が陽性となる。
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6 |
尿路の腫瘍 |
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本文記の3は、芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体による尿路の腫瘍について業務起因性の判断要件を示したものである。
表1のC)がん原性物質の物質名称欄に掲げる物質は、芳香族化合物の二トロ又はアミノ誘導体のうち「ひと」に腫瘍が発生することが確認されているか又はそのおそれが強く疑われているものである。業務起因性の判断に当たって留意すべき事項は下記のとおりである。
(1) |
ベンジジン及びベータ‐ナフチルアミンについてはわが国でも尿路腫瘍の発生例が多い。これらの腫瘍は、ばく露条件によってはばく露期間が比較的短くても発生することがあり、また、ばく露開始から発症までの期間(いわゆる潜伏期間)については、長短さまざまで退職後に発生することも少なくない(わが国の発症例では潜伏期間が5年未満のものも知られており、30年を超えたものもある。)。 |
(2) |
表1のC)がん原性物質の物質名称欄に掲げる4物質は労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第55条により製造等が禁止されているので、一般にこれらの物質による腫瘍の発生は、これらの物質にばく露する業務に従事していた者にしかみられないものである。ただし、試験研究の業務については、同条ただし書により製造等が認められていることに留意する必要がある。 |
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7 |
その他 |
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芳香族化合物の二トロ又はアミノ誘導体ばく露の指標となる尿中代謝物質の主なものを表3に示す。
なお、比較的普遍的に利用しうる尿中ジアゾ反応陽性物質の検査方法を別紙2に掲げる。 |
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表1 芳香族化合物の二トロ又はアミノ誘導体毒性一覧表
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A)ニトロ誘導体 |
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(注) |
1. |
本表は、新労働衛生ハンドブック(労働科学研究所)、Patty編"Industrial
Hygine and Toxicology"等を参照のうえ作表した。 |
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2. |
許容濃度は、日本産業衛生学会(昭和58年)及びACGIH(1983)による。単位はppm。ただし〔
〕内はmg/m3。なお、この数値の使用に当たってはそれぞれの前文を参照すること(Sは経皮吸収に注意すべきものであること。) |
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3. |
◎は発生危険強 ○は発生危険中 △は発生危険弱 |
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4. |
許容濃度は、最新のものに置き換えた。 |
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B)アミノ誘導体 |
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C)がん原性物質 |
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(注) |
本表は、"IARC Monographs on the evaluation of carcinogenic risk
of chemicals to man(1972-1974)"、"U.S.A.Federal Register"等の報告を参考にして作表した。なお、アルファ‐ナフチルアミンについては学問上ひとに対する発がんの証拠は確認されていないが、実際の産業現場ではアルファ‐ナフチルアミンにべ一タ‐ナフチルアミンが混入して尿路腫瘍が発生し、これをアルファ‐ナフチルアミンによる腫瘍として処理されているケースがある。 |
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表2 メトヘモグロビン量と症状の関係 |
メトヘモグロビン量 |
症 状 |
10%まで |
全く無症状である |
10〜25% |
チアノーゼが現われるがほとんど無症状である |
25〜35% |
チアノーゼが著明になる |
35〜40% |
運動により、頭痛、めまい、疲労、呼吸困難、頻脈等を起こす |
40%以上 |
酸素欠乏症が出現する |
50〜60% |
意識喪失、痙攣を起こす |
60〜75%以上 |
昏睡状態で生命の危険を招く |
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(注) |
1 |
筋労作等により生体の酸素消費が高まっているときは、より低濃度で症状が現われる。安静を保っていると症状は軽い。 |
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2 |
本表は、Patty編"Industrial Hygine and Toxicology"、Areana著"Poisoning"等を参照のうえ作表した。 |
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表3 芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体の尿中代謝産物 |
ばく露物質 |
尿中代謝産物 |
ニトロベンゼン |
パラ‐アミノフェノール |
ジニトロベンゼン |
モノニトロアニリン |
ジニトロクロロベンゼン |
モノニトロアニリン |
トリニトロトノレエン |
2・6‐ジニトロ‐4‐ヒドロキシアミノトルエンのグルクロナイド |
アニリン |
パラ‐アミノフェノール |
ベータ‐ナフチルアミン |
2‐アミノ‐4‐ナフトール及びナフトキノンイミン |
アルファ‐ナフチルアミン |
不変 |
トルイジン |
トルイジンのモノ及びジアセチル化合物 |
ジアニシジン |
ジアニシジンのモノ及びジアセチル化合物 |
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(注)その他 Diazotizable metabolites、グルクロナイドなども増加する。 |
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別紙1 メトヘモグロビン濃度測定法
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1 目的と原理 |
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芳香族化合物の二トロ又はアミノ誘導体取扱い作業者にみられるメトヘモグロビン血症の程度を測定することにより芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体のばく露による人体への影響の程度を判断する資料とする。
pH6.6におけるメトヘモグロビンの吸光度は630mμで最大であり、シアンメトヘモグロビンの吸光度は540mμで最大となる。
630mμにおけるメトヘモグロビンの吸光度と、青酸ソーダによりメトヘモグロビンをシアンメトヘモグロビンに変換したのちの吸光度との差は、メトヘモグロビン濃度に比例する。以下の方法は主としてEvelyn and Malloy−橋本変法(1)にもとづいた。 |
2 器具と試薬 |
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(1) 器具
@注射器
A採血ビン(ヘパリン処理、血液1mlに対し、ヘパリン0.1〜0.2mg)
B0.1mlピペット
C試験管
D分光光度計
(2) 試薬
@M/10燐酸緩衝液、pH6.6
AM/50燐酸緩衝液、pH6.6(@を5倍に希釈する)
B20%フェリシアン化カリ水溶液
C5%青酸ソーダ水溶液 |
3 測定操作 |
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(1) |
蒸留水8.Omlを試験管にとり、全血0.1mlを加えて混和し、溶血後M/10燐酸緩衝液2.Omlを加え混和する。5分後に630mμの吸光度(L1)を測定する。 |
(2) |
(1)の血液加緩衝液2.Omlを別の試験管にとり、M/50燐酸緩衝液8・Omlを加え混和する。 |
(3) |
(1)の残液に5%青酸ソーダ水溶液を1滴加え、混和したのち、630mμの吸光度(L2)を測定する。 |
(4) |
(2)の混和液に20%フェリシアン化カリ水溶液を1滴加え、混和し、30分間放置したのち、5%青酸ソーダ水溶液を1滴加え、混和し、540mμの吸光度(L3)を測定する。 |
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4 係数の決定(正常血液を使用する) |
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(1) |
蒸留水8.Omlを試験管にとり、全血0.1mlを加えて混和し、溶血後M/10燐酸緩衝液2.Omlを加えて混和する。 |
(2) |
(1)の血液加緩衝液2.Omlを別の試験管にとり、さらにM/10燐酸緩衝液8.Omlを加え混和する。 |
(3) |
(1)の残液に20%フェリシアン化カリ水溶液を1滴加え混和して、メトヘモグロビンとし、30分間放置後630mμの吸光度(L'1)を測定する。 |
(4) |
(3)の残液に5%青酸ソーダ水溶液を1滴加え混和して、シアンメトヘモグロビンとし、630mμの吸光度(L'2)を測定する。 |
(5) |
(2)の混和液に20%フェリシアン化カリ水溶液を1滴加え混和して、30分間放置後、5%青酸ソーダ水溶液を1滴加え混和して、シアンメトヘモグロビンとし、540mμの吸光度(L'3)を測定する。 |
(6) |
使用した血液の総ヘモグロビン(C)を通常の方法(シアンメトヘモグロビン法)で別に測定する。 |
(7) |
メトヘモグロビンの係数をK1、総ヘモグロビンの係数をK2とすると、
K1=C/(L'1-L'2)、K2=C/L'3 |
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5 計算 |
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(1) メトヘモグロビン量(L1-L2)×K1、
(2) 総ヘモグロビン量=L3×K2
(3) メトヘモグロビン(%)=(L1-L2)/L3×K1/K2×100 |
6 注意事項 |
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(1) |
採血後できるだけすみやかに氷冷保存し(凍結保存は不可)かつ数時間以内に測定することが必要である。 |
(2) |
わずかな吸光度の変化がメトヘモグロビンの値に大きく影響するので、L1とL2の測定間隔はなるべく短くすることが望ましい。 |
(3) |
L1とL2を交互に測定する場合、セルに青酸ソーダが残留しないように十分洗浄しなければならない。 |
(4) |
多数のサンプルをいちどに測定する場合には、L1の測定をすべて終了したのちL2を測定すれば便利であるが、この場合L1とL2の測定間隔が長くなるので、自記分光光度計を用いて、600〜700mμ程度の波長域の吸収スペクトルを比較して、L1とL2の差を求めることが望ましい。 |
(5) |
メトヘモグロビンの測定法は、上記の方法のほかに、血液加緩衝液に青酸カリを加えたのち、578mμおよび565mμの吸光度を測定する方法(菊地ほか(2))、血液加緩衝液の592mμおよび578mμの吸光度を測定する方法(長谷川(3))があるが、いずれも波長がきわめて正確であることが必要であり、多数のサンプルをいちどに測定したい場合には、上記の方法の方が便利である。 |
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7 参考文献 |
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(1) |
橋本綱太郎:Evelyn and Malloy の Methemoglobin定量法の吟味、国民衛生、27、385-387(1958) |
(2) |
G.Kikuchi、R.Shukuya、M.Suzuki and Nakamura:On the mechanism of the activation
of molecular oxygen by hemoglobin、J.Biochem.42、3-20(1955) |
(3) |
長谷川弘道:職業病検診手技、久保田重孝・土屋健三郎編、17頁、興生社(1972) |
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別紙2 尿中ジアゾ反応陽性物質の検査方法
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1 目的と原理 |
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芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体取扱い作業者にみられる尿中のジアゾ反応陽性物質の量的増加の程度を測定することにより芳香族化合物の二トロ又はアミノ誘導体に対するばく露の程度を判定する資料とする。
体内に吸収された芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体は代謝を受けたのち尿中に排出されるが、アミノ誘導体はそのままの形で、また二トロ誘導体は還元されてアミノ化合物となるとジアゾ反応に対して陽性となり赤色〜紫色を呈する。その吸光度を測定する。 |
2 器具と試薬 |
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(1) 器具
@採尿容器(約200ml程度)
A試験管
イ 長さ9.Ocm×直径2.5cmの大試験管
ロ 長さ16.5cm×直径1.7cmの中試験管
ハ 長さ10.5cm×直径1.2cmの小試験管
B100℃水浴装置
C60℃水浴装置
D分光光度計
Eその他ピペット、薬匙など
(2) 試薬
なるべく特級試薬を用いる。
@蒸溜水(以下水と記す。)
A濃塩酸
B亜鉛沫(密閉保存する。)
C亜硝酸ソーダ液(0.2%、使用時に調製する。)
Dスルファミン酸アンモニア液(1%、同上)
Eナフチルエチレンジアミン液(1%、同上)
Fパラアミノフェノール(標準液作成用:試薬および水溶液は感光性を有する。試薬は冷暗所に保存する。水溶液は使用時に調製しかつ直射日光をさける。なお備考(3)<略>を参照のこと。) |
3 検量曲線 |
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パラアミノフェノールを水に0.5mg/mlの濃度に溶解し、これを原液として0、0.1、0.2、0.3、0.5、0.75、1.Omg/3mlの濃度の系列を作って5測定に記すように処理・発色させ検量曲線とする。高濃度では検量曲線は直線からはずれるので低濃度の部分を用いる。なお注意事項(3)を参照のこと。 |
4 試料尿の採取 |
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ばく露が週日の勤務時間中連続して行われる場合には週の後半の午後1時頃に排尿の後、午後2〜3時頃の尿を採取して試料とすることが望ましい。同時に比較のために非ばく露者(対照者)数名からも採尿する。 |
5 測定 |
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(1) |
加水分解
小試験管に試料尿3mlをとり濃塩酸0.3mlを加え、100℃水浴中にて1時間加熱する。 |
(2) |
還元
水解物0.4ml、水8.Oml、濃塩酸0.8mlを大試験管にとり、亜鉛沫0.5gを加え時折振盛しながら室温にて30分放置し、さらに60℃水浴中にて15分加熱する。 |
(3) |
発色
上清各3.Oml(要すれば遠心沈澱する。)を中試験管2本(発色および対照)にとり、O.2%亜硝酸ソーダ0.3mlを加え混和して室温に10分間放置、1%スルファミン酸アンモニア0.3mlを加え混和して室温にて5分間放置、さらに1%ナフチルエチレンジァミン液0.3ml(対照側には最後の試薬のみは代りに水0.3ml)を加える。 |
(4) |
測定
最後の試薬を加えてから30分後に560mμの吸光度を測定し発色側と対照側との吸光度の差を求める。この値を標準曲線と比較して濃度に換算する。 |
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6 注意事項 |
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(1) |
この定量法は芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体であれば幅広く適用出来る。 |
(2) |
非ばく露者尿でもその程度は弱いがジアゾ反応に対して陽性を示す。したがって必ず非ばく露者尿の分析を並行して行い、その値に対する増加の程度をみることが大切である。 |
(3) |
この定量法では標準物質としてパラアミノフェノールをあげたが被験者が特定の芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体を取り扱っている場合にはその物質の尿中代謝物(多くの場合には取扱い物質のフェノール誘導体)を標準物質とすることが望ましい。この場合にはジアゾ反応後の最大吸収を示す波長が560mμから長短いずれかにずれることがある。 |
(4) |
市販の「風邪薬」にはしばしば芳香族の炭化水素化合物のアミノ誘導体が含まれており、そのために風邪薬服用時には尿中に大量のジアゾ反応陽性物質が排出される。したがってこの定量法を応用する場合には「風邪薬」を飲んでいないことを確認しておく必要がある。 |
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7 参考文献 |
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Watanabe、T.et.al.:Int.Arch.Occup Environ Health(1976) |
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