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じん肺の合併症に係る療養等の取扱いについて
 【昭和53年6月1日 事務連絡】
○じん肺の合併症に係る療養等の取扱いについて

 改正じん肺法の施行については、昭和53年4月28日付け基発第250号により通達されたところであるが、今回新たに療養の対象とされたじん肺の合併症についての労災請求に係る事務処理に当たっては、下記に留意のうえ、労働衛生及び労災補償両事務系列相互の緊密な連携を図り、迅速適正な補償が実施できるよう特にご配意願いいます。
 



1. 発見時の措置
 じん肺法(以下、「法」という。)第12条、第15条、第16条又は第16条の2の規定による提出又は申請に係る診査において、じん肺法施行規則(以下、「則」という。)第1条に規定する合併症(以下、「合併症」という。)にかかっていると認められる者を確認した場合は、診査を行った局の労働衛生主務課から次により所要の通知を行うこと。
(1) 通知先
 当該り患者が、現に常時粉じん作業に従事している場合又は常時粉じん作業に従事した後同一事業場において粉じん作業以外の作業に従事している場合は、当該事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(以下、「署長」という。)
 当該り患者が常時粉じん作業に従事した事業場から離職している場合は、当該り患者が常時粉じん作業に従事した最終の事業場(以下、「最終粉じん事業場」という。)の所在地を管轄する都道府県労働基準局長(以下、「局長」という。)

(2) 前記(1)ロにより通知を受けた局長は、直ちに関係書類を最終粉じん事業場の所在地を管轄する署長あて送付すること。

(3) 送付すべき書面
 じん肺管理区分決定通知書(則様式第4号)の写(管理4の決定又は合併症の診断のあった者については、その症状確認日を余白に記入すること。)
 じん肺健康診断結果証明書(則様式第3号)の写(前記(1)のロに該当する場合は、粉じん作業職歴の欄の最終粉じん事業場の名称に所在地を付記したもの)

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2. 労災請求時の措置
(1)  前記1に係る労働者以外の者から労災請求があった場合の事務処理は次によること。
 既にじん肺管理区分(以下、「管理区分」という。)の管理2又は管理3の決定を受けている労働者又は労働者であった者(以下、「労働者等」という。)については、じん肺管理区分決定通知書の写を提出させるか又はその最後の決定を行った局の労働衛生主務課に照会し、前記1の(3)のイ及びロの事項を確認のうえ、所要の事務処理を行うこと。この場合、粉じん職歴の追加又は最終粉じん事業場の変更のある場合もあるので留意すること。

 既に決定を受けている管理区分が管理1である労働者等又は管理区分の決定を受けていない労働者等については、法第15条の規定による管理区分決定の随時申請(以下、「随時申請」という。)の指導を行うとともに、当該申請に係るじん肺管理区分の決定を行う局の労働衛生主務課あて合併症に係る労災請求があった旨を通知し、労災請求に当たって提出された医証その他じん肺診査に参考となると認められる資料を送付すること。この場合、当該労働者等が随時申請を行うために受けるベきじん肺健康診断については、労災請求によって得られた資料の範囲内でその項目に係る検査を省略することとして差し支えない。

(2)  前記2の(1)のロに該当する者から随時申請を受理した局の労働衛生主務課においては次の事務処理を行うこと。
 昭和53年4月28日付け基発第250号通達の様式1「じん肺診査経過処理簿」の備考欄に、合併症に係る労災請求事案である旨を付記すること。
 当該申請に係る診査により合併症に関する判定が得られたときは、合併症の有無を問わず、前記1の通知を行うこと。
 前記ロにより通知を行うときは、労災請求に当たって提出された医証その他じん肺診査に参考となると認められる資料を送付した署長に返還すること。

(3)  一人親方等、法の適用のない者については、労災請求によって得られた資料の範囲に係る項目を除き、労災保険法第47条の2の規定による受診命令によりじん肺健康診断に準じた検査を受けさせ、その結果及び労災請求によって得られた資料を付して、局労働衛生主務課に管理区分に準じたじん肺の程度の判断を依頼すること。

3. 合併症の認定等
(1)  前記1に係る労働者から労災請求があった場合又は前記2の(1)のロ若しくは(3)に該当する者について、じん肺診査医が合併症にかかっていると認めた場合は、労災請求に係る疾病を業務上の疾病と認定して差し支えないこと。

(2)  前記2の(1)のイに該当する者については、労災請求によって得られた資料その他の資料から、昭和53年4月28日付け基発第250号(改正じん肺法の施行について)記第3の1による合併症と認められるものについて、労災請求に係る疾病を業務上疾病として認定することとなるが、労災請求に係る疾病について則第1条の規定による合併症であるかどうかの判断が困難なものについては、関係資料を付し、局労働衛生主務課に連絡し地方じん肺診査医の意見を求め、その意見に基づいて認定を行うこと。
 なお、次のような事案については、地方じん肺診査医の意見を求めるまでもなく、一般に合併症として取り扱って差し支えないこと。
 肺結核であって、病巣の性状が結核病学会病型分類の第1型、第2型又は第3型に該当すると医師により認められるもの。
(注) 第1型  広汎空洞型  空洞面積の合計が拡がり(第2肋骨前端上縁を通る水平線以上の肺野の面積をこえない範囲)をこし、肺病変の拡がりの合計が一側肺に達するもの
第2型  非広汎空洞型  空洞を伴う病変があって、上記第1型に該当しないもの
第3型  不安定非空洞型  空洞は認められないが、不安定な肺病変があるもの
 脳膜炎であって、肺に結核病変の認められるもの
 X線所見上明らかに気管支拡張が認められる続発性気管支拡張症。
 外傷その他じん肺以外の原因が認められない気胸

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4. 障害補償の取扱い
(1)  合併症が治ゆした者については、治ゆ時におけるじん肺健康診断の結果、管理区分が管理4と決定された者を除き、身体に一定の程度以上の障害を残す場合において、当該労働者等の請求に基づき、その障害の程度に応じ、障害補償給付を行うこととなるが、この場合の障害等級等の取扱いは、「障害等級認定基準」の胸腹部臓器の障害の項(じん肺による障害)を適用すること。

(2)  今回のじん肺法の改正に伴い、じん肺健康診断における肺機能検査の方法が大幅に改訂されたが、障害等級の判定に用いる心肺機能の検査方法は、従前の方法によること。この場合、「著しい肺機能の障害がない」と判断された者について従前の方法による検査によって「心肺機能に中等度の障害がある」ものの範囲を超えるものも生じうるが、これは検査方法の相違によるものであって、実績的な高度障害には該当しないので、障害等級の判定においては、中等度の障害として取扱うこと。

(3)  今回のじん肺法の改正で新たに認められた合併症のうち、続発性気管支炎及び続発性気管支拡張症については、それらの発症の原因となるじん肺病変が不可逆性であることから、一般に症状の消長が繰り返されることが予測されるので、症状の出現期においては要療養とし、消退期においては療養の中断として取扱い、治ゆの判断には特に慎重を期すること。結核性胸膜炎及び続発性気胸については、症状の発現は、一般に一過性のものと考えられるが、じん肺とこれらの疾病との相互の関連を考慮し、肺結核における従前の取扱いと同様に相当期間の経過観察を経たのち、治ゆ及び障害等級の認定の時期を判断すること。

5. その他
(1)  前記2の(1)のロに該当する労働者が随時申請を行うために、所轄署長の指導により、同署長の指定した病院等において、じん肺健康診断を受けた者に係る当該健診費目については、労災認定上の必要な経費(業務上の場合は保険給付費、業務外の場合は認定庁費)とみなして差し支えないこと。

(2)  前記2の(3)又は3の(2)によるじん肺診査医への意見書の依頓は、じん肺診査医をあらかじめ局労災医員に委嘱するか又は署長(認定が特に困難であることにより局にりん伺したものについては局長)からの専門医に対する鑑定依頼かのいずれかの方法によって行うこととし、所定の謝金を支払うこととすること。

(3)  前記4による合併症の治ゆ時のじん肺健康診断(法第9条の規定により事業者が行うべきものを除く。)及び障害等級の認定のための心肺機能検査等の費用は、療養の費用(診療費)とみなして差し支えないこと。

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