HOME情報公開推進局  認定基準
粉じんばく露歴に労働者性の認められない期間を含む者に発生した
じん肺症等の取扱いに関する留意事項等について
 【昭和61年2月3日 事務連絡第73号】
○粉じんばく露歴に労働者性の認められない期間を含む者に発生したじん肺症等の取扱いに関する留意事項等について

 標記については、昭和61年2月3日付け基発第51号(以下「通達」という。)をもって指示されたところであるが、通達の趣旨、基本的な考え方、留意事項等については下記のとおりであるので、これらについて関係職員等に周知のうえ、認定事務の適正迅速化が図られるようご配慮を願いたい。
 



1. 通達の趣旨
 通達は、労働者、事業主、一人親方、海外派遣者等の異なった就業形態による粉じん作業従事期間を二以上有する者がり患したじん肺症又は合併症(通達の「合併症」をいう。以下同じ)の業務起因性の判断について、各局における取扱いが必ずしも、斉一的に行われているとは言えない状況にあることから、その取扱いを明確にし、適正迅速な事務処理を確保するために示されたものである。

2. 通達における基本的な考え方
(1)  保険給付を受ける権利は、労働者等(通達記の1の(1)の「労働者等」をいう。以下同じ。)の退職(特別加入者にあっては地位の消滅をいう。以下同じ。)によって変更されることはないので(労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)第12条の5第1項)、粉じん作業に従事した労働者等が退職した後において事業主等(通達記の1の(2)の「事業主等」をいう。以下同じ。)として粉じん作業に従事しても、これのみを理由に保険給付を受ける権利が消滅するものではない。

(2)  長期にわたって粉じん作業に従事した者のある時点におけるじん肺は、それまでに吸入し、肺に沈着した粉じんとこれに対する生体の反応によって形成されたものとしては握されるものである。従って、労働者等として粉じん作業に従事した期間と事業主等として粉じん作業に従事した期間との双方の職歴のある者のじん肺については、これらの粉じん作業が相まって原因をなしているものであり、いずれか一方のみの粉じん作業に原因を求めることは医学上合理性を欠くものである。また、合併症については、これにり患した時点におけるじん肺の病変を素地としてこれに細菌感染等の外因が加わること等により高頻度に発症する疾病であり、じん肺と密接な関連をもつものであるので、じん肺と同様労働者等として従事した粉じん作業と事業主等として従事した粉じん作業が相まって原因をなしているものである。
 しかしながら、このような者のじん肺症又は合併症について業務起因性があると判断されるためには、粉じん作業を労働者等として従事したものと事業主等として従事したものとに区分して比較検討し、労働者等として従事した粉じん作業が相対的に有力な原因であると認められなけれぱならない。

(3)  じん肺の進展に関与する主な要因としては、粉じんの種類、粉じんの濃度及び粉じん作業従事期間がある。基本的には、じん肺の進展に明らかな差異を生じさせない範囲の種類の粉じんであれは、じん肺症又は合併症にり患した時点までに吸入し、肺に沈着した粉じんの総量が多い程じん肺が進展するものである。
 従って、粉じんの種類に明らかな差異がなく、かつ、粉じん濃度に明らかな差異がない場合には、じん肺の進展は主として粉じん作業従事期間によって左右されることとなるものである。

上に戻る

3. 留意事項
(1)  粉じんの種類の差異
 通達記の2の(1)のイの「粉じんの種類に明らかな差異が認められないこと」とは、粉じんの濃度と粉じん作業従事期間が同じ程度である場合に、じん肺の進展に明らかな相違が生じるような粉じんの種類の差異がないことをいうものであり、遊離珪酸濃度が極めて高い珪石の粉じんとそれ以外の粉じんのような差異がないことをいう。

(2)  粉じんの濃度の差異
 通達記の2の(1)のロの「粉じんの濃度に明らかな差異が認められないこと」の判断は、気中粉じん濃度を参考として行うことが望ましいが、これらが得られない場合には、作業方法、作業内容等を参考として推定して差し支えない。

(3)  粉じん作業従事期間
 通達記の1の対象者に該当することがは握された者については、聴取り調査等により、労働者としての粉じん作業従事期間、特別加入者としての粉じん作業従事期間及び事業主等としての粉じん作業従事期間の区別並びに作業方法その他必要な事項をは握すること。
 通達記の2の(1)のハの「労働者等としての粉じん作業従事期間が事業主等としての粉じん作業従事期間より明らかに長いと認められること」とは、3年以上の差を有する場合をいうこととする。
 労働者等として従事した粉じん作業と事業主等として従事した粉じん作業との前後関係については、これを考慮しないこととして差し支えない。

(4)  業務起因性の判断
 通達記の2の(1)に該当するじん肺症又は合併症については、これを業務上として取り扱うこととしているが、粉じん作業従事期間の差が3年未満の場合等これに該当しないじん肺症又は合併症についても、これを直ちに業務外とする趣旨ではなく、通達記の2の(2)に示すところにより個々の事案ごとに、慎重に判断すべきものであることに留意すること。

4. 保険給付手続きについて
(1)  通達記の2及び前記3の(4)により業務起因性が認められたもののうち、労働者等の粉じん作業従事期間に労働者及び特別加入者のそれぞれの粉じん作業従事期間を有している場合の保険給付手続きは次の通りとする。
 労働者としての粉じん作業従事期間が特別加入者としての粉じん作業従事期間より明らかに長いと認められる場合には、労働者に係る保険関係により給付手続きを行うこととする。
 特別加入者としての粉じん作業従事期間が労働者としての粉じん作業従事期間より明らかに長いと認められる場合には、特別加入者に係る保険関係により給付手続きを行うこととする。
 労働者としての粉じん作業従事期間と特別加入者としての粉じん作業従事期間とに明らかな差がない場合には、両者の粉じん作業従事期間のうちで最終の粉じん作業従事期間の身分に係る保険関係により給付手続きを行うこととする。

(2)  (1)のイ及びロにおいて、「明らかに長いと認められる場合」とは3年以上の差を有する場合をいう。

上に戻る