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塩化ビニルばく露作業従事労働者に生じた疾病の業務上外の認定基準
 【基発第556号 昭和51年7月29日】
○塩化ビニルばく露作業従事労働者に生じた疾病の業務上外の認定について

 標記については、さきに昭和50年9月11日付け基発第534号「塩化ビニルによる障害の防止及び労災補償の取扱いについて」をもって指示したところであるが、その後本省において「塩化ビニル障害に関する専門家会議」を設け、塩化ビニルモノマーによる健康障害全般について検討を行ってきたところである。
 今般、同専門家会議からその検討結果をとりまとめ別添の報告書が提出されたので、これに基づき塩化ビニルによる疾病にかかる労災認定については、今後、下記により取り扱うこととしたので事務処理に遺漏のないようにされたい。
 なお、この通達により業務起因性が認められる疾病のうち肝血管肉腫については、労働基準法施行規則別表第1の2第7号9、肝血管肉腫以外の疾病については同別表第4号の規定に基づく労働省告示第36号表中に掲げる塩化ビニルによる疾病に該当するものとして取り扱い、この通達により判断することが困難な事案については関係資料を添えて本省にりん伺されたい。



第1 塩化ビニルによる健康障害について

 塩化ビニルモノマー(以下単に「塩化ビニル」という。)重合工程等において塩化ビニルにばく露する作業に従事した労働者に発生した疾病の主なものは以下のとおりである。

 急性ばく露による障害
 めまい、羞明、吐気、見当識障害等の自他覚症状を伴う中毒症状のほか、急性の高濃度ばく露による中毒症状としては重症の不整脈、虚脱、意識喪失、あるいは死亡に至った例がある。

 慢性ばく露による障害
 長期反覆ばく露による障害としては、以下に掲げるものが知られている。
(1)  肝血管肉腫
(2)  次のものを伴う肝脾症候群(上記(1)を除く。)
 イ 肝脾腫
 ロ 食道及び胃の静脈瘤
 ハ 門脈圧亢進
 二 血小板減少等
(3)  指端骨溶解(レイノー様現象を伴うことがある。)
(4)  強皮症様皮膚病変(レイノー様現象を伴うことがある。)

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第2 塩化ビニルばく露作業従事労働者に発生した疾病の業務上外の認定について

 悪性腫瘍の取扱い
(1) 肝血管肉腫
 塩化ビニルばく露作業従事労働者に発生した肝血管肉腫であって、次のイおよびロのいずれの要件をも満たすものについては、労働基準法施行規則別表第1の2第7号9に掲げる疾病に該当するものとして取り扱うこと。
 塩化ビニル重合工程における塩化ビニルばく露作業従事歴が4年以上の者に発生したものであること。
 原発性のものであること。
 ただし、肝血管肉腫についてはその発生と塩化ビニルヘのばく露との関連について専門的検討を加える必要があるので、当分の間、作業内容、従事期間、ばく露した化合物の種類、ばく露の程度、症状(病理組織学的検査剖検等の所見を含む。)等を調査のうえ本省にりん伺すること。
(2) 上記(1)以外の悪性腫瘍
 塩化ビニルばく露作業従事労働者に発生した悪性腫瘍のうち、肝血管肉腫以外の腫瘍については、現時点ではその発生と塩化ビニルヘのばく露との関連が必ずしも明らかでなく、個々の事案について慎重な検討を要するので、作業内容、従事期間、ばく露した化合物の種類、ばく露の程度、症状(病理組織学的検査剖検等の所見を含む。)等を調査のうえ本省にりん伺すること。


 肝脾症候群(上記1の悪性腫瘍を除く。)の取扱い
 塩化ビニルばく露作業従事労働者に発生した肝脾症候群については、前記第1−2−(2)に掲げる症状を伴うことがあるほかは慢性ウィルス性肝炎、アルコール性肝炎又は肝硬変に伴う肝脾症候群との鑑別が困難であり、その発生と塩化ビニルヘのばく露との関連について専門的検討を加える必要があるので、作業内容、従事期間、ばく露した化合物の種類、ばく露の程度、症状(肝機能検査血液検査等の臨床検査、病理組織学的検査、剖検等の所見を含む。)等を調査のうえ本省にりん伺すること。
 なお、専門家会議中間報告書では、肝脾症候群にかかる臨床診断については、検査設備の整った基幹病院で肝機能検査・末梢血液検査、上部消化管レントゲン検査・肝脾シンチグラム等及び必要な場合には本人の希望により又は同意を得たうえで腹腔鏡検査・肝生検・選択的動脈撮影等を段階的に実施することが望ましいとされているが、労災保険の給付請求にかかる事案の処理についてとくに留意すること。


 上記1及び2以外の疾病の取扱い
 塩化ビニルばく露作業従事労働者に発生した疾病のうち、次の(1)から(3)までに該当するものであって、医学上療養を必要とするものについては、当該業務以外の原因によるものと判断される場合を除き、労働基準法施行規則別表第1の2第4号の規定に基づく労働省告示第36号表中に掲げる塩化ビニルによる疾病として取り扱うこと(ここでいう「塩化ビニルぱく露作業」とは、作業環境が大幅に改善されるよりも以前のばく露条件下における作業と同程度のものをいい、作業環境が昭和50年6月2日付け基発第348号通達で示されている管理濃度以下に改善された後においては一般に下記のような疾病は発生しにくいものである。)。
(1)  指端骨溶解
(2)  強皮症様皮膚病変
(3)  急性ばく露による障害(前記第1の1)
 なお、指端骨溶解については、症状が固定している場合は「障害等級認定基準」(昭和50年9月30日付け基発第565号)により取り扱うこととなる。

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