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適正給付管理の実施に係る事務処理上の留意点について
 【昭和59年8月3日 事務連絡第25号】
○適正給付管理の実施に係る事務処理上の留意点について

 今般、昭和59年8月3日付け基発第391号で「適正給付管理の実施について」(以下「通達」という。)が指示されたところであるが、通達の事務処理上参考となるべき事項等を下記のとおりとりまとめたので、各局ではこれらを参考として実効ある事務処理方針を定めて適正な運用に努められたい。
 なお、本省では、各都道府県労働基準局(以下「地方局」という。)から適正給付管理実施状況報告(通達別紙適管様式第5号)によって報告のあった事項等で適正給付管理に有用な情報を把握した場合には、これをとりまとめて各局に参考として送付することとするので適正給付管理のための対策に資するよう努められたい。
 



1. 管理対象者について
 通達記の1及び2の(1)のイでは、療養を継続して6カ月を経過した傷病労働者について適正給付管理力一ド(個人別)(適管様式第1号、以下「管理カ一ド」という。)を送付することとしている。これは負傷にあっては創面のゆ合、疾病にあっては、急性症状の消退がおおむね6ヵ月以内に期待できるものであり、この時期から傷病労働者の各種症状を的確に把握管理する地方局の参考とするため、6か月のプログラムを組んだものである。しかし、管理対象者数、地方局の主体的能力等を勘案し、通達における管理対象者は、一応療養開始後1年を経過した者としたものである。
 なお、各局で具体的対策を実施する際には、当面、その実情に応じて、例えば「負傷に係るもの」、「1年6ヵ月以上療養を継続しているもの」等適宜管理対象者の選定基準を定め、これを当該局の管理対象者としても差し支えない。

2. 管理方法について
(1)  管理力一ド等
イ.  管理カ-ドについては、労働本省(労災保険業務室)から当該管理カードに係る傷病労働者の属する事業場の所在地を管轄する労働基準局(以下「所轄局」という。)あて毎月正副二部送付するので活用を図る。例えば当該正副管理力一ドに当該労働者に係る初回の診療費請求内訳書(以下「レセプト」という。)等から所要の事項を記載し、そのうち正本は所轄局で保管することとし、副本は、当該管理対象者の事業場の所在地を管轄する労働基準監督署(以下「所轄署」という。)に送付し、その後の管理に利用するなどの方法がある。
ロ.  通達記の2の(1)のロの適正給付管理名簿(以下「名簿」という。)については、労働保険番号順のもの(適管様式第3号)は、管理力一ドに記載された者の療養の有無の確認が可能であり、また、医療機関別のもの(適管様式第4号)は、当該都道府県労働基準局の管轄区域に所在する医療機関に受療している者(所轄局以外に係る者を含む。)の確認が可能であるので適正給付管理実施に際しては、これを有効に活用して、署間あるいは局間で相互に連携を保ちながら調査を行う等、的確な調査の実施に資する。
ハ.  所轄署は、上記イにより所轄局から送付のあった管理カ一ド副本に労働者災害補償保険法施行規則(以下「労災則」という。)第18条の2に定める届書、同則第19条の2に定める報告書等、適正給付管理上必要な書類を個人別に編綴し、さらに名簿、保険給付記録票等により必要事項を転記するなどして記録整備に努める。
 なお、診療費に係るデータ等については適宜検索により出力し、調査に活用する。
ニ.  負傷又は発病年月日が昭和56年9月30日以前のため、新システム処理上擬制新規データとして入力されたもののうち所轄局以外の都道府県労働基準局(以下「他局」という。)に係る管理対象者の適正給付管理については、当該傷病労働者に係る管理カードを所轄局から他局に送付し、以後は当該他局において処理する。

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(2)  調査の実施
イ.  所轄署は、管理カ一ド等の傷病名、傷病の状態等を勘案のうえ、管理対象者のうちから調査を必要とすると認められる者(以下「調査対象者」という。)を選定する。
ロ.  医療機関(転医したものである場合には必要に応じ、転医前の医療機関)に対して、調査対象者に係る文書調査を実施する場合には、例えば次の事項を当該照会文に記載するなど調査対象者の症状把握が的確にできるような照会文とするよう努める。
@ 労災保険制度上の治ゆの概念の説明
A 初診から現在までの療養及び症状の経過
B 症状が安定しているか否か
C 症状が安定していないとすれば現在の症状の詳細
D 治療の効果があるか否か
E 治療の効果があるとすれば、現在の治療内容とその具体的な治療効果
F 重筋労働、軽作業、事務的作業、原職等の就労の可否
G 今後の具体的な治療方針
H 治ゆの見込の時期
I 治ゆの時期が3ヵ月を超える場合又は不明の場合にはその具体的な理由
J その他
 また、文書調査を行うことが適当でないと判断される場合には、実地調査を行うこととなるが、その際には上記@〜Jの事項に留意して的確な調査に努める。
ハ.  調査対象者本人に対する調査は、当該調査対象者の実情、調査事項等を考慮し、訪問調査又は呼出調査の方法を選択する。
 なお、その際次の事項に留意して的確な調査指導に努める。
@ 労災保険制度上の治ゆの概念の説明
A 過去の症状、治療内容
B 現在の症状
C 現在の治療による効果
D 日常生活の状況
E 社会復帰及び労働福祉事業に関すること
F 障害(補償)給付の概念及び請求の方法
G その他
ニ.  地方労災医員等に医学的意見を求める場合には、上記ロ又はハの調査結果、その他関係書類を提示のうえ、的確な意見が得られるよう努める。
ホ.  上記ロ、ハ及びニにより調査等を行った調査対象者については、その調査結果から判断して
@ 症状固定と認められる者
A 療養を継続しながら就労が可能と認められる者
B 療養に専念することが必要と認められる者
に区分し、その旨管理力一ドに記載したうえで次の措置等所要の措置を講ずるとともに、当該調査対象者から保険給付の請求があった場合には、これに基づいて行政処分を行う。
(イ)  上記@に該当するものについては、医療機関、調査対象者本人等について症状固定と認められ、その後の給付はできない旨の通知をする。
(ロ)  上記Aに該当するものであって、各種社会復帰援護制度等の要件に該当する者については、当該制度について十分な説明を行い効果的な活用を図る。
(参考通達)  昭和48年11月5日付け基発第593号「頭頸部外傷症候群等の労働災害被災者に対する特別対策の実施について」
昭和56年11月30日付け基発第747号「林業振動障害者職業復帰対策協議会の設置について」
昭和57年6月21日付け基発第424号「林業振動障害者職業復帰対策地区協議会の設置について」
昭和57年6月21日付け基発第426号「林業振動障害者職業復帰推進員について」
昭和57年7月19日付け基発第476号「振動障害再発防止特別援護措置の実施について」
昭和58年7月25日付け基発第358号「長期療養者職業復帰援護金の支給について」
ヘ.  上記ホの区分がA又はBに該当する者で、治ゆ見込の時期を経過した日(治ゆの時期が不明である者については、当該症状に応じた妥当な期問を経過した日)以後調査を実施する必要のある者については、管理カードにその旨記載し、再度上記ロ、ハ、ニ及びホにより調査及び管理を行う。
ト.  調査対象者となったものについて、照会に対する回答がないなど保険給付に係る資料が整わない間は、所定の保険給付の支給要件を満たしているかどうかの判断ができないこととなるので、その確認ができるのをまって、当該保険給付に関する決定を行う。

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(3) 事務処理体制の整備
イ.  所轄局は、通達に基づく適正給付管理の実施に当たっては、その実効を期するため、労災医療監察官に所轄署の実施上の問題点等に関する相談指導の任に当たらせ、当該労災医療監察官を中心に推進する。
 なお、労災医療監察官が配置されていない地方局にあっては、社会復帰指導官、労災保険給付調査官等(以下「社会復帰指導官等」という。)の中から適任者を選任してこの任に当たらせる。
ロ.  労災医療監察官叉は社会復帰指導官等は、適正給付に関する情報を管理し、適宜所轄署の処理方針、処理方法等を指導するとともに、必要に応じて所轄署が実施する調査に参加するなど、所轄署の業務運営の円滑な処理に協力する。
ハ.  労災医療監察官又は社会復帰指導官等は所轄署が行う調査対象者に係る実地調査に際しては、適正給付管理名簿(医療機関別)(適管様式第4号。以下「医療機関別名簿」という。)を活用し、署間又は他局間の連携を図って当該調査対象者が受療している医療機関における他の調査対象者の調査にも配慮する。なお、医療機関別名簿は当該医療機関で受療している管理対象者の全てを登載しているものであり、他局分の管理対象者も当然に含まれているが、他局には当該所轄局管内に所在する医療機関に係る医療機関別名簿は送付されないこととなっているので、所轄局は当該医療機関別名簿により他局に係る管理対象者の受療状況等を把握した場合はその情報を当該他局に提供するよう努める。

(4)  その他
イ.  適正給付管理を行うに当たっては、医療機関等との接触が重要な業務となるものであり、日頃から労災保険制度の趣旨を十分説明するなど意思疎通を図り、無用の誤解を与えないよう努める。
ロ.  通達の趣旨については、機会あるごとに医療機関等に周知し、本制度の円滑な運用について協力を依頼する。
ハ.  療養開始後1年未満のものであっても従来どおり適正給付に努めることは当然であり、また傷病(補償)年金受給者についても労災則第21条に基づく定期報告により適正給付管理を必要と認められる者を把握した場合においては、管理対象とする。


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