(1) |
解説2関係
「相当の濃度」の解釈を「マンガン(Mn)としておおむね5r/m3以上の濃度」としたのは、過去のマンガン等による疾病の発症例、日本産業衛生学会において示されている許容濃度(5r/m3)等を参考とし、かつ「マンガンによる健康障害に関する専門家会議」(以下「専門家会議」という。)での専門医の意見を参酌したものであること。
なお、マンガン・ヒェームについては5r/m3以下での発症を示唆する報告もあることから、当該請求事案の処理に当たっては特に留意すること。
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(2) |
解説4の(4)のイ関係
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新認定基準記の1の(2)では、マンガン中毒の初期症状から中間期、確立期に至るまでの症状の経過を要件として示しているが、これは必ずしも一定期間の経過観察を必要とするものではなく、解説4の(4)のイの条件が認められる場合には、初期症状の段階であっても当該要件を満たすものとして取り扱って差し支えないものであること。 |
A |
マンガンは人にとって必須金属であり、マンガン等にばく露する業務に従事したことのない一般人(以下「健常人」という。)の体内にも少なからず蓄積されているものである。このため、健常人の血液、尿、糞便等の中にもある程度のマンガンが存在するのであるが、そのマンガン量は個人によってかなりの差があるので、その平均的な数値を目安として示すことは妥当でない。また、体内のマンガン量がいかなる量になれば、マンガン中毒を発症するかという「量ー影響関係」も明らかになっていない。
したがって、新認定基準にいう「明らかな増加」とは、比較的マンガン量の多い健常人の値と比べても著明な増加が認められる場合をいい、「異常な増加」とは、それよりも更に数倍以上の増加が認められる場合をいうものであるが、その判断に際しては専門医等の意見を求めるなどにより適正に行うこと。 |
B |
「原子吸光分析法を用いる等医学的に適正と認められる検査方法」とは、原子吸光分析法のほか吸光光度分析法、放射化分析法等これと同等以上の検査方法をいうものであること。 |
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(3) |
解説4の(5)関係
解説4の(5)の類似の症状を示す疾病のうち以下に掲げるものについては、鑑別に際して当該各項に記載した事項に留意すること。
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パーキンソン病
マンガン中毒は、神経症候の点からみればパーキンソン病に類似しているが、パーキンソン病特有の錐体外路症候のほか、錐体路症候、小脳症候等が組み合わさって発現することでパーキンソン病と区分できることがある。また、マンガン中毒では振戦の発現が少なく、強迫笑が著明であるが、パーキンソン病特有の丸薬まるめ様運動をみることが少なく、固縮も強くない。 |
A |
一酸化炭素中毒後遺症
一酸化炭素中毒後遣症としてのパーキンソン症候群では発症が急で、幻覚などを伴う精神症状がより著明てあり、また、コルサコフ症候群などを伴うことなどから鑑別できる。 |
B |
脳炎後遺症
脳炎後遺症としてのパーキンソン症候群では運動亢進がみられる。また、知能は保たれるが、攻撃的で粘着性傾向がみられる。しかし、マンガン中毒では、運動亢進がなく、無関心、不活発で人格崩壊がある。 |
C |
多発性硬化症
マンガン中毒では、臨床上、多発性硬化症に類似する点が若干みられるが、実際には基本的な違いがあるので、鑑別は比較的容易である。 |
D |
末梢神経障害
末梢神経障害では遠位部知覚障害などの多発性神経炎症状を呈する場合もあり、これとの鑑別を要する場合もあるが、マンガン中毒では極めて稀な症状である。 |
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(4) |
その他
マンガン中毒の初期の精神症状はー過性のもので固定例の報告はなく、また、初期の神経症状も、マンガン等へのばく露から離れると間もなく症状は軽快消失するとの報告がある。したがって、マンガン中毒の初期の段階で認定された者が、医学上適切な療養を相当期間施してもなお症状の軽快がなく治ゆしない場合は、他の原因により当該症状を呈している場合もあるので鑑別等の措置が必要である。 |