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心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断における事務処理について
 【平成12年3月24日 事務連絡第3号】
○心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断における事務処理について

 標記の判断については、平成11年9月14日付け基発第544号「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」(以下「判断指針」という。)等により指示されたところであるが、心理的負荷による精神障害等に係る請求事案(以下「事案」という。)の斉一的かつ迅速・適正な処理を図るためには、都道府県労働基準局(以下「局」という。)及び労働基準監督署(以下「署」という。)の緊密な連携により事案の処理を進める必要がある。
 このため、事案の事務処理について、下記のとおり取りまとめたので、適正かつ効率的な処理に努められたい。 



第1 基本的事項

1 相談等における対応
 精神障害等の労災認定に関し相談等があった場合には、パンフレット等を活用することにより、労災保険制度や判断指針の考え方等について懇切丁寧に説明すること。
 なお、財団法人労災年金福祉協会に委託して相談事業を行うこととしているので、労災年金相談所(室)と必要な連携を図ること。

2 職員研修等の実施
 精神障害等の労災認定に関する十分な理解や専門的知識等を習得させるため、職員研修等を計画的に実施し、職員の資質向上に努めること。

第2 迅速・適正な事務処理等

1 調査計画の策定等
 事案の迅速・適正な調査を実施するため、収集すべき資料及び照会先、調査時期、聴取対象者の選定及び聴取事項等について検討を加え調査計画を策定するとともに、調査の早期着手及び署の管理者による適切な進行管理に留意すること。

2 局署の連携等
 事案の処理に当たっては、高度の医学的専門知識が必要となる揚合もあり、局の署に対する指導・助言、地方労災医員(精神科医員)との調査段階からの調整が不可欠であることから、これらの連携を徹底すること。

3 処理経過簿の作成
 事案の処理経過を的確に把握するため、請求書を受理した際には局にその概要を報告させ、局においてはその報告に基づき、別添「精神障害等の処理経過簿(別紙1)、(別紙2)」に記載し、以降、処分決定時まで随時進捗状況を把握すること。

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第3 調査実施要領

1 調査事項等
 「判断指針」の業務上外の判断の基本は、精神障害の発病の有無、発病時期及び疾患名の確認をした上で、
@  当該精神障害発病前おおむね6か月の間の当該精神障害の発病に関与したと考えられる、業務による具体的出来事の把握及びその出来事に関わる心理的負荷の強度の評価
A  当該精神障害発病前おおむね6か月の間の当該精神障害の発病に関与したと考えられる、業務以外の具体的出来事の把握及びその出来事に関わる心理的負荷の強度の評価
B  精神障害の既往歴等の個体側要因の評価
を各々行い、それらが事案の発病にどの程度関わったかについて総合判断するものであることから、それぞれについて客観的かつ可能な限り詳細に調査すること。
 なお、調査等に当たっては、当該労働者等のプライバシーの保護に十分配慮すること。

2 調査の取りまとめ
 調査漏れの防止、調査結果の取りまとめの便宜のために別添調査票(様式1から様式4)を作成したので活用されたい。
 なお、各様式は事案ごとに工夫して差し支えないものであり、様式に記載されていない項目等があれば、適宜付記されたい。
(1)  様式1について
 様式1は、事案の概要、就労条件等一般的事項、出現した心身の症状、業務による心理的負荷、業務以外の心理的負荷及び個体側要因等の項目に分けて調査結果を整理し記載すること。
(2)  様式2について
 様式2は、調査結果を時系列に整理し記載すること。
(3)  様式3について
 様式3は、時間外労働等の状況の調査結果を整理し記載すること。
(4)  様式4について
 様式4は、複数の専門家の合議等による検討結果等について取りまとめ記載すること。

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第4 地方労災医員による合議

1 地方労災医員の効果的活用について
 地方労災医員については、昭和56年1月1日付け基発第1号、昭和62年12月22日付け基発第721号(以下「721号通達」という。)及び平成5年3月31日付け基発第205号等に基づき運用しているところであるが、精神障害等の客観的な業務上外の判断を図るため、精神医学の専門家である地方労災医員(以下「精神科医員」という。)を局に原則として3名配置することとしたので的確な運用に努めること。

2 精神科医員の委嘱について
 精神科医員の委嘱に当たっては、心理的負荷による精神障害の業務起因性の判断を行うものであることから、委嘱しようとする医師の診療科等に留意すること。
 なお、委嘱等の運用に当たっては、721号通達等によるものであること。

3 精神科医員の効果的な活用について
 労働基準監督署長が精神障害等の業務上外の判断を行うに当たっては、医学専門的な意見が不可欠であり、医学的意見を求める際には、調査に万全を尽くし、十分な資料を提示する必要がある。
 そのため、調査実施計画の策定などの調査の初期の段階から精神科医員に対し当該事案の医学専門的事項等に関する助言・指導を受けながら調査を進め、事案に応じた的確な調査を実施すること。

4 精神科医員の合議による検討について
 地方労災医員による協議を円滑に行うため、局に地方労災医員協議会及び同協議会専門部会を設置することができるとされているが、心理的負荷による精神障害等の業務上外の具体的検討に当たっては、客観的な判断がなされる必要があることから、複数の専門家による合議等によって行うこととしており、新たに同協議会に精神障害等専門部会(以下「部会」という。)を設置し、合議等による医学的検討結果の意見を求めること。
 なお、部会は原則3名の精神科医員によって構成するものであること。
 また、部会の設置等に当たっては、昭和62年12月22日付け事務連絡第33号により行うものであること。

5 部会の運営について
 部会の開催に当たっては、部会の構成員に対し、あらかじめ事案の概要等を取りまとめた前記第3の2の調査票、聴取書、医療機関から入手した資料等(給付基礎日額に関する資料等医学的検討に不要な資料は除く。)を送付するなど事前の準備を行って部会の効率的な運営を図るとともに、局署の連携をとりながら時機を失することなく部会を開催し、もって事案の迅速処理に努めること。

6 医学的検討結果の記載依頼事項について
 部会からの医学的検討結果については、「判断指針」に沿った医学的な業務上外の結果を求めること。
 その際、検討結果については、調査結果に基づき、
@  精神障害の発病の有無、発病時期及び疾患名の特定
A  当該精神障害発病前おおむね6か月の間の当該精神障害の発病に関与したと考えられる、業務による具体的出来事の把握及びその出来事に関わる心理的負荷の強度の評価
B  当該精神障害発病前おおむね6か月の間の当該精神障害の発病に関与したと考えられる、業務以外の具体的出来事の把握及びその出来事に関わる心理的負荷の強度の評価
C  精神障害の既往歴等の個体側要因の評価
D  @からCを具体的に明らかにした上での業務起因性に関する総合判断を求めること。

第5 本省との連携

 事案の判断指針への当てはめ等について、必要に応じて調査の初期の段階から本省との十分な連携を図るよう努めること。
 なお、本省に協議事案の処理などのため、精神障害等の労災認定について造詣の深い医学専門家による「心理的負荷に関する専門検討会」を存置するので、部会における検討において、前記第4の6に掲げる項目の判断について疑義が生じた場合などは、結論を急ぐことなく、本省を通じ、当該検討会に対し意見又は助言を求め、その上で再度部会による検討を行う等により、的確な結論が得られるよう配意すること。

編注: 別添「精神障害等の処理経過簿(別紙1)、(別紙2)」及び
     調査票(様式1から様式4) (略)

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